朝から雨が時折強くふる週末の昼下がり、事務所で仕事をしていると「ドンガラガッシャ~ン!」の凄まじい音とともに「地響き」が起きた!会社の前は片側対面の府道がありさほど交通量は多くない・・・。事務所からその道路を見ると、乗用車が「横転」。
助手席の窓から、若い女性が這いつくばって車から脱出してきた、気は動転しているが外傷は見る限り無し。横転した車は完全に道路をふさいでしまっている。雨も降っていることだし、会社の事務所に入ってもらい、救急車と警察を待つことになった。車道と歩道の境目の鉄柵にノーブレーキで乗り上げ右側に飛ばされ「横転」したようだ。しばらくして警察と救急車が到着、病院に搬送する前に警察官が事情聴取をしていたが・・・、どうも「完全にわき見(スマホ?)をしていたようなことを・・・。
よく見ると、この比較的新しいコンパクトカー「レンタカー(わ)ナンバー」なんです!これは他人事じゃない!ので今回は「わき見運転の危険性」について調べてみました。(どこから借りたんだろう???)
そもそも、わき見運転(わき見事故)は、自動車やバイクの運転者が前方(進行方向)の道路状況から視線をそらし、他のものに気を取られている間に発生する交通事故です。
警察庁や自動車保険会社などの統計においても、安全運転義務違反のなかで常に上位を占める、極めて身近かつ重大な交通事故原因の一つです。
そこで、わき見事故の定義やメカニズム、発生原因、具体的な危険性、社会的責任、そして未然に防ぐための具体的な対策までを私なりに調べてみました。
1. レンタカー運転時も注意!わき見事故の定義と「安全運転義務違反」
日本の道路交通法第70条では、すべての運転者に対して「安全運転の義務」を課しています。
道路交通法 第70条(安全運転の義務)
「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及さないような速度と方法で運転しなければならない。」
とあります・・・。わき見運転はこの条文に違反する行為であり、警察の事故統計では「安全運転義務違反」の中の「わき見運転」という区分に分類されるようです。
「わき見運転」と「運転操作不適」「動静不注視」の違い
安全運転義務違反には、わき見運転のほかにいくつかの類似概念があります。その違いを整理することは、わき見の特異性を理解する上で重要です。
- わき見運転: 視線そのものが前方の道路や交通状況から外れている状態(例:スマホを見る、カーナビを見る、外の景色を見る)。
- 動静不注視: 前方や周囲の対象物(歩行者や前走車)を目で見て認識しているにもかかわらず、「止まるだろう」「動かないだろう」と勝手に思い込み、その危険性を軽視して注視を怠る状態(所謂「だろう運転」)。
- 漫然運転: 視線は前方を向いているものの、考え事をしていたり眠気があったりして、脳が情報を認知・処理していない状態(いわゆる「心ここに在らず」の状態)。
つまり、わき見運転とは「目(視線)が前方を向いていない」という状態のことをいうのです。
2. わき見運転が重大な交通事故を誘発するメカニズム
人間が自動車を運転する際、脳は「認知」「判断」「操作」という3つのステップを絶え間なく、かつ瞬時に繰り返しています。わき見運転は、この最初のステップである「認知」を完全に遮断するため、致命的な事故へと直結します。
わずか2秒のわき見がもたらす恐怖
そこで時速40kmや60kmで走っている車が、わずか「2秒間」のわき見でどれだけの距離を進むか、具体的な数値は以下の通りです。
| 走行速度 | 1秒間に進む距離 | 2秒間で進む距離(わき見走行距離) |
|---|---|---|
| 時速 30 km | 約 8.3 m | 約 16.6 m |
| 時速 40 km | 約 11.1 m | 約 22.2 m |
| 時速 50 km | 約 13.9 m | 約 27.8 m |
| 時速 60 km | 約 16.7 m | 約 33.4 m |
時速60kmであれば、2秒間目を離しただけで、車は全く制御されない状態(空走状態)のまま33メートル以上も進んでしまいます。これは25mプールよりも長い距離です。
もし、わき見を始める直前に前走車が急ブレーキを踏んでいたり、歩行者が飛び出してきたりした場合、運転者が視線を前方に「戻した」時点では、すでに衝突を回避する時間的猶予は残されていません。「つまりはノーブレーキで衝突!」、相手側(物・人)の被害もさることながら、運転者や同乗者も身構える余裕もないことから双方の被害は最大限大きなものになります。
停止距離の構造
車が危険を察知して完全に停止するまでには、以下の2つの距離の合計である「停止距離」が必要です。
- 空走距離: ブレーキを踏んで実際にブレーキが効き始めるまでの距離。
- 制動距離: ブレーキが効き始めてから、車が完全に停止するまでの距離。
わき見運転をしている場合、最初の「危険を察知する」タイミング自体が遅れる(あるいは認知できない)ため、空走距離の前に「わき見をしていた時間分の走行距離」がそのまま上乗せされることになり、衝突の回避は不可能です。
3. なぜ人はわき見をしてしまうのか?「ながらスマホ」など主な原因と背景
わき見運転の原因は、スマートフォンの普及といったテクノロジーの進化から、人間の心理的な油断まで多岐にわたります。
① スマートフォン・携帯電話の操作・注視(ながらスマホ)
これは昨今社会的問題に発展している、まさに現代における最たる原因の一つです。メールやSNSの通知音が鳴ったことで気になり画面を見る、通話をする、マップやアプリを確認するなどの行為です。スマートフォンの画面を凝視すると、視野が極端に狭くなり、周囲の状況変化に一切気付けなくなります。
② カーナビゲーションや車載ディスプレイの注視
ルートを確認するためにカーナビの画面を数秒間見続けたり、走行中に音楽のプレイリストを変更したりする行為です。近年は車載ディスプレイが大型化・多機能化しており、操作が複雑になったことも視線移動の時間を長引かせる要因となっています。
③ 車内の物品への接触・捜索
「助手席に置いたカバンから物を取り出す」「床に落ちたコインやペットボトルを拾おうとする」「グローブボックスを開ける」といった動作です。これらは視線が外れるだけでなく、体勢が崩れてハンドルやブレーキの操作ミスを同時に誘発するため非常に危険です。
④ 車外の景色・看板・事故への興味(野次馬)
「珍しい建物がある」「きれいな景色が広がっている」「反対車線で事故が起きている」といった理由で、進行方向以外に視線を奪われるケースです。特に、他人の事故を凝視するあまり、自らが前走車に追突するという連鎖的な事故は頻発しています。
⑤ 同乗者との会話やバックミラーの注視
助手席や後部座席の同乗者(特に子供やペット)の様子が気になり、振り返ったりルームミラー越しに顔を注視したりする行為です。
⑥ 慣れによる油断(心理的要因)
毎日通る「走り慣れた道」や、信号が少なく単調な高速道路などでは、運転者の緊張感が緩みます。「少しの時間なら前を見なくても大丈夫だろう」という根拠のない過信や油断が、わき見運転の根底にあります。
4. 大阪の交通事情でも多発!わき見事故が招く深刻な結果・事例
わき見事故は、運転者が「ブレーキを踏まない(または踏み遅れる)」状態で衝突することが多いため、被害が甚大化しやすい特徴があります。
- 追突事故(最も多いケース): 信号待ちや渋滞で停止している前走車、あるいは減速した前走車に、ノーブレーキに近い速度で追突します。首鞭打ち(むち打ち症)や、最悪の場合は前走車の乗員を死亡させる事態に至ります。
- 歩行者・自転車との衝突: 交差点での左折・右折時や、横断歩道の手前でわき見をしていると、歩行者や自転車の存在に気づけず、はね飛ばしてしまいます。生身の人間に対する衝突は、重大な人身事故(死亡・重傷)に直結します。
- 単独事故(工作物衝突・路外逸脱): カーブの手前や直線道路でわき見をし、ハンドル操作を行わないまま道路脇の電柱、ガードレール、中央分離帯に激突したり、崖下に転落したりします。
5. わき見運転・ながらスマホに対する厳しい罰則と重い社会的責任
わき見運転、特に「ながらスマホ」に起因する事故の多発を受け、2019年(令和元年)12月に道路交通法が改正され、「ながら運転」に対する罰則が厳罰化されました。
携帯電話等の使用(保持・注視)に対する罰則
【保持】(画面を注視したり通話したりした場合、事故を起こしていなくても適用)
- 罰則: 6ヶ月以下の懲役、または10万円以下の罰金
- 反則金: 普通車の場合 18,000円(改正前の3倍)
- 基礎点数: 3点(改正前の3倍)
【交通の危険】(わき見やスマホ操作によって、実際に事故を起こしたり危険を生じさせたりした場合)
- 罰則: 1年以下の懲役、または30万円以下の罰金
- 基礎点数: 6点(一発で免許停止処分)
- 反則金制度の適用なし: 非反則行為となり、刑事手続き(赤切符)の対象となります。
刑事責任・民事責任・社会的制裁
人身事故を起こした場合、運転者には以下の3つの重い責任が科されます。
- 刑事責任: 「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷処罰法)」に基づき、過失運転致死傷罪などに問われます。7年以下の懲役・禁錮、または100万円以下の罰金が科され、悪質な場合は実刑判決となるケースも少なくありません。
- 民事責任: 被害者に対する損害賠償責任です。治療費、慰謝料、休業損害、将来の逸失利益など、被害が死亡や重度障害に及ぶ場合、数千万円から数億円規模の賠償金が請求されます。任意保険でカバーできる場合もありますが、重大な過失がある場合は過失割合(責任の度合い)が高くなり、自己負担や保険料の跳ね上がりを招きます。
- 社会的制裁: 勤め先からの懲戒解雇や、社会的信用の失墜、家族への精神的・経済的負担など、一瞬のわき見によってこれまでの人生すべてを失うリスクがあります。
6. 慣れないレンタカーでも安心!わき見事故を防ぐための実践的対策
わき見事故のほとんどは、運転者の「意識」と「事前の準備」によって100%防ぐことができる人工的なミスです。以下の対策を徹底することが求められます。
① スマートフォンの「ドライブモード」設定
車に乗り込む前に、スマートフォンを「ドライブモード」や「おやすみモード」に設定し、通知音が鳴らないようにします。また、カバンの中や後部座席など、運転中に物理的に手が届かない場所へスマホを置く習慣をつけることが最も効果的です。
② カーナビやオーディオの操作は「出発前」か「停車時」に
目的地の手動設定や音楽の選択は、必ず出発前に行います。走行中にルート変更が必要になった場合は、そのまま操作しようとせず、サービスエリア、パーキングエリア、あるいは安全な場所に車を完全に停止させてから操作します。
③ 車内の整理整頓
運転中に物が転がったり落ちたりしないよう、ダッシュボードや助手席に不安定な荷物を置かないようにします。また、飲み物やサングラスなど、運転中に使う可能性のあるものは、停車中にホルダーなどの取りやすい位置へ配置しておきます。
④ 「1秒先」の安全確認意識(視線移動のルール化)
どうしてもミラーの確認やメーター類のチェックが必要な場合は、「1秒以上視線を外さない」というルールを自分自身に課します。チラッと見てすぐに視線を正面に戻し、前方の安全を確認してから、再度不足している情報を確認するという「分割確認」を徹底します。
⑤ 体調管理と適切な休憩
疲れや眠気があると、集中力が低下して注意が散漫になり、関係のないものへ視線が向きやすくなります。長距離運転では2時間に1回は休憩を取り、脳の疲労を回復させることが大切です。
⑥ 先進安全技術(ADAS)の活用
近年、多くの新車に搭載されている「衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)」や「車線逸脱警報装置」、「ドライバーモニタリングシステム(運転者の視線や顔の向きを検知して警告する機能)」は、万が一のわき見の際に事故の衝撃を軽減、または回避をサポートしてくれます。しかし、これらはあくまで補助装置であり、「システムがあるから安心」と過信してわき見をしては本末転倒です。
7. まとめ:大阪でレンタカーをご利用の皆様へ「運転中は、前を見る!」
わき見事故は、「故意に起こす事故」ではないものの、「前を見ない」という運転者自身の選択と油断によって引き起こされる「防げたはずの事故」です。
時速60kmで走る鉄の塊(自動車)をコントロールしているという責任の重さを、すべての運転者が再認識しなければなりません。スマートフォンの一通の通知、カーナビの画面、車外の些細な景色――それらを見るために費やす「わずか2秒」には、自分や他人の命、そして家族の人生を破滅させるほどの巨大なリスクが潜んでいます。
「運転中は、前を見ること!」
この、自動車教習所の初日に習う最も基本的かつ重要な原則を一人一人が愚直に守り続けることこそが、わき見事故を社会からなくすための唯一にして最大の解決策です。
(データーGoogleから一部引用:編集・文責:辰巳寛一)